ロボット人事部って何をしてるの?電通のRPA活用の今
人手不足が深刻化する中、ロボットによる業務の自動化(Robotic Process Automation、以下RPA)へと注目が集まっています。市場成長は目覚ましく、IT系の市場調査によれば国内のRPA市場は2016年から2021年までの5年間で平均59.3%の急成長が期待されるとのことです。
大手企業でも利用が進みつつあります。ソフトバンクではお客様デモ用端末の返却管理の一連のプロセスをRPAにより自動化することにより、これまで月約4000件、100時間に及んでいた業務作業についてほぼ100%の工数削減に成功しています。
ではRPAは仕事を肩代わりしてくれる魔法のようなツールなのでしょうか?実際は「魔法のような」、というわけにはいきません。ロボットが業務を行う場合は、「ロボットを管理する仕事」が発生します。RPAを導入するだけではなく、使われる仕組みにするために必要なのが「ロボット人事部」なのです。
ロボット人事部はどのような役割を果たしているのか、今回は全社を挙げて働き方改革へと取り組む電通の事例をご紹介します。
使い続けられる仕組みに
ロボットに置ける自動化には隠れた問題があります。それは業務手順自体が自動化されたとしても、従業員がロボットをしっかりと「使う」必要があるということです。RPAを導入し、当初は「すごい」と思って従業員が利用しても、繰り返し使われ定着しなければ、数回で使用されなくなってしまうことがよくあるのです。使用手順を面倒に感じたり、はたまたロボットがしょっちゅう停止してしまうようでは、使うことに嫌気が差してしまいます。
ロボットは確かに便利ですが、読み取るサイトのUI(ユーザーインタフェース)が変わってしまうだけで機能障害を起こしてしまうなど、融通の利かない部分があります。RPAはあくまで業務を自動で行うものであって、勝手に働いてくれるものではありません。実際に運用する場合には労働力の一つ、つまり「働き手」と見なし適切に管理する必要があるのです。
ロボットを社員の「アシスタント」に
多くの異なる取引先を持つ電通では、どのようにRPAを運用しているかその一端を覗いてみましょう。個人の仕事はそれぞれの業務内容が大きく異なるため、ロボットの立ち位置は社員の「アシスタント」。今では約600台にも及ぶ多種多様なロボットに社員番号が与えられ、「配属」されています。
そしてロボットたちの動作を常に見守り、不具合などには逐一対応し改善を図るのがロボット人事部の役目です。社員に向けてロボットの使用方法のプロモーションビデオを作成し、ダッシュボードでその動作を監視し、不満や要望があればしっかりと反映させます。
この様子を見ると、まるで電通は社内へと向けてひとつのサービスを展開しているようにも見受けられます。RPAを継続的に、かつ有効に活用する為に、保守点検及び改善は欠かせないのです。
「ロボット人事部」を広げる
また、電通はこのRPAの効率化の手法を取引先にも開示しています。RPAの一大ユーザーとしてロボットを利用するだけではなく、さまざまな会社へ対し培ってきたノウハウを公開しています。いろいろな会社で業務の効率化が進めば、直接的にはその会社との取引の効率化に繋がり、他の業種への貢献の機会にもなると考えているそうです。
ロボット人事のような体制を整えられる企業はまだ多くはありませんが、その中でも電通はRPAの取り組みを共有していこうという姿勢を見せています。人手の不足や生産性の低下は日本経済全体の問題です。RPAを企業の真の戦力とするためにも、電通のロボット人事を参考にしてみてはいかがでしょうか。