知っておきたいリストラの論理。ピンチをチャンスに変える思考とは?
近年大手企業の人員削減の一環として、50歳前後の所謂バブル入社世代を対象にした希望退職募集などのリストラが多く見られるようになってきています。
なぜ人手不足と言われる今、リストラが増加しているのか。それも50歳前後が対象なのか。そこには明確な理由があります。
■従来の年功序列制度が時代にそぐわない
勤続年数が賃金に反映される年功序列制度では、転職による優秀な人材の囲い込みが難しくなりました。中途入社、中途採用者についても正しく適正な人事評価をするためには、勤続年数ではなく純粋に能力や成果に基づいた「時価」で社員を評価するシステムが必要です。企業自体が社内ルールを組み替えることを余儀なくされているのです。
それに社内で反発を起こす勢力が、まさにその年功序列制度によって高い賃金を獲得しているバブル世代の社員達です。既得権を持っている彼らの賃金を急激に下げることは難しく、結果的に退職金を引き上げて希望退職を募る、関連会社への出向を促すといったリストラを行うことになる、というのが現状です。
■社員の新陳代謝を促す
新規事業など新たな分野を開拓する際、一般的には中高年社員より若手の方がモチベーションが高いというのが企業側の見方です。社員の世代別比率において、中高年が社員の半数を上回るようないびつ比率となってしまえば、新事業の推進力は鈍り、人件費により経営が圧迫されてしまうでしょう。
事業の存続をかけ、企業が必死でとりくんでいるのが若く優秀な人材を会社へと取り込むための改革です。人件費の高い中高年を減らし、若い人材を増やしたい。そんな事情が年功序列制度撤廃に対する抵抗を弱めるという理由と合わせて、このリストララッシュに拍車をかけているのです。
もちろん、中高年にも優秀な人材はたくさんいます。希望退職などのリストラには、こうした貴重な人材までもが失われてしまうというリスクがあります。リストラは短期的には企業にメリットをもたらすかもしれませんが、残された社員のモチベーションダウンにもつながりかねません。リストラは、次は自分が対象になるかもしれないという不安感、それに伴う企業へのロイヤリティの低下など、中長期的な目線で見るとある程度のリスクが伴う行為なのです。
正しい意味での時価評価が導入され、能力に対してしっかりと妥当な賃金が支払われるようになれば、リストラの必要性はだんだんと落ち着いていくでしょう。いわばリストラは、「働き方改革」における当然の変態過程なのです。
年功序列制度という殻を脱いで、年齢性別関係なく能力が評価される「時価」評価制度への変化。これは決して中高年に対する冷遇ではなく、従来であれば賃金が低下していくはずの高齢者にとっては大きなチャンスとなり得ます。
年功序列がなくなることは、今までの”勤務年数”のアドバンテージを失うことと同義です。しかし、それと同時に能力や経験などの”時間”のアドバンテージは失われず、むしろ正しく評価されるようになります。リストラを恐れて萎縮するよりも、自分のスキルや経験を見つめなおし「自分の価値」をしっかりと作っていくことが大切です。
自分の仕事への適切な評価をどう得るかは、自分は何ができるかを自覚することから始まる時代がやってきます。これからは「何年働いてきた」ではなく、「自分は何を積み上げてきたか」をアピールする必要があるのではないでしょうか。