被害者?加害者?ミドル層とパワハラ問題
職場において強い立場にある人間が、嫌がらせを行うパワーハラスメント(パワハラ)への対応が進められています。政府はパワハラを防ぐための措置を企業へと義務付ける法案を閣議決定し、通常国会で成立すれば、企業は2020年春には相談窓口を設ける必要があります。
調査によれば、35歳以上のミドル層でパワハラを受けたという人は8割にも及び、その内約35%は結果として「退職した」とのこと。パワハラが深刻な人材流出の原因となっていることが浮かび上がりました。
では、実際に法律で対策が必要となるパワハラとはどのようなものなのか、厚生労働省が述べる6つの行為に関して紹介していきます。
身体的な攻撃
直接的な暴力は傷害にあたるためそもそももってのほかですが、例え怪我を負わない程度であっても叩く、殴る、蹴るといった身体に対する攻撃は、業務には関係のない行為であり、個人の尊厳を傷つけるものとして許容されません。
また、ファイルや丸めたポスターで頭を叩くといった行為も、業務から逸脱した範囲で被害者側を委縮させる行為であり、これも身体的なパワハラに該当します。
精神的な攻撃
脅迫や暴言などといった立場を悪用する形で人格に対して攻撃する行為、同僚が見ている前で厳しく説教をするといった行為もこれに該当します。
2017年度の労働局への相談では「いじめ・嫌がらせ」に関するものが7万2000件を超えており、こういった目に留まりにくいパワハラへの対応も急務となっております。
人間関係からの切り離し
一人だけ席を別室に移して作業を行わせるといった仲間外れや、挨拶をしても返事をせずに無視をするといった疎外行為がこれに含まれます。
他にも正規の手続きや理由もなく、強制的な自宅待機を命令したりするのもパワハラになります。
過大な要求
業務に対する過大な要求、日本では昔から問題とされている違法残業や、それを正当化するサービス残業の強要はパワハラに該当します。
裁判で認定されたものには、先輩が他の従業員の仕事を後輩に押し付け、徹夜で仕事をさせたというものがあります。これは極端な例ですが、新人に無理な仕事を背負わせる行為もパワーハラスメントです。
日本では一時期「24時間戦えますか」という標語が流行ったこともあり、残業して当然という風潮が社内風土に根付いてしまっている組織も少なくはありません。こういったパワハラでは、上司ではなくその温床となる環境を放置した企業が責任に問われるケースも少なくないため、組織的に防ぐ取り組みが重要視されています。
過小な要求
過大な要求とは逆に、本人の役職とは無関係の過小な労働を強いる行為もパワーハラスメントに該当します。例を挙げるとすれば、接触事故を起こした運転手に真夏に期限を示さず除草作業を命じたという例があり、これは裁判で認定を受けています。
草むしりの他にも、事務職に倉庫業務だけを命じたり、役職にそぐわぬ待遇を強いるのは立派なパワハラです。こういったケースは判断が難しいですが、社内教育を徹底することで数を減らすことができるでしょう。
個の侵害
上司が部下のプライバシーを侵害するような行為を指します。例を挙げるとすれば、部下の交際相手に関して執拗に問いかけたり、部下の妻に対して悪口を言ったりという行為は仕事の上下とは無関係な越権行為だと言えるでしょう。
また、対象が女性の場合は、私生活に関してしつこく聞くとセクシャルハラスメントにも抵触する場合があるため、例え飲み会などのオープンな場であったとしても、最低限の配慮は欠かさずにいるべきでしょう。
厚労省によれば、既にこういったパワハラに対する相談口を設置している企業は大手を中心に7割を超えています。しかし、実情は設置したのみで実際にパワハラを防止できていないといったケースも少なくありません。
パワハラを撲滅する第一歩は、被害を受けた人が訴え出ることのできる仕組みを整備し、企業として「パワハラは許さない」という姿勢を明示することです。また、現在管理職・マネージャーの職にある方は「職場の当たり前」を見つめなおし、自分が加害者になっていないか振返ってみることも必要になるかもしれません。
メンバーがいきいきと仕事ができるような職場づくりに必須の6つのチェックポイント、今一度確認してみてください。