お忘れなく!転職時の確定拠出年金の「持ち運び」
転職で会社を離れる際、仕事の引き継ぎなどに手一杯で忘れがちになるのが、転職にまつわる自分自身の事務処理や手続きです。とりわけその中でも忘れがちなのが「確定拠出年金(DC)」。失業保険や健康保険の手続きに比べ認知度が低い制度です。確定拠出年金(DC)に関する手続きは、しっかりと意識しておかないと損をすることになってしまいます。
■確定拠出年金とは
日本の年金は「3階建て」の構造になっています。1階が全国民が加入する国民年金。2階が公務員やサラリーマンが加入する厚生年金保険や、フリーランスの方や自営業者が加入する国民年金基金。そして、3階部分に位置するのが従業員を対象に独自に企業が運営する企業年金です。確定拠出年金は、そのなかの企業年金のひとつです。
従来、企業年金と言えば確定給付企業年金のことでした。確定拠出年金に付いてしっかりと理解するためには、このふたつの違いを良く知っておく必要があります。
●確定給付企業年金
・企業が掛け金を支払い、金融機関がそれらを運用する。
・金融機関の運用による成果に多少左右されるものの、将来的に受け取れる年金額はある程度約束されている。
●確定拠出年金
・加入者本人(又は企業との共同)で毎月一定額の掛け金を拠出し、「自身で」運用する。
・支払われた掛け金が口座に積み立てられ、運用成果が将来的に自分の元へと帰ってくる。
確定給付企業年金は「企業が金融機関にお金を出して勝手にやってくれる」。確定拠出年金は「自分でお金を出して自ら運用する」、と認識しておけば間違いはないでしょう。確定拠出年金の方が自己責任を問われますが、その反面上手く運用すれば大きな利益が見込めます。
■退職金と混同しないように気をつける
確定拠出年金に対して、「会社をやめた時に貰えるなにか」というイメージを抱いている人は少なくありません。しかし、受け取るまで全て会社がお膳立てしてくれる退職金と異なり、確定拠出年金は自分で運用方針を決定する必要があるのです。
■転職時は絶対に要チェック!「DC難民」にならないように!
「DC(確定拠出年金)難民」という言葉をご存知でしょうか。確定拠出年金で企業型DCを利用していた場合、退職後6ヶ月以内に資産をiDeCoに移すなどの措置を取らないと資産は自動的に現金化され、iDeCoが主体となって運営する国民年金基金連合会に移されてしまうのです。そうした資産の移動措置を取られている人を自動移管者と言います。
これの何が問題なのかというと、自動移管者の資産が運用されなくなってしまうことです。オマケに手数料は毎月引かれていき、増えるどころかかえって減少していきます。この問題は、転職先に企業型DCが存在しない場合に発生しがちです。
今でも退職時に充分な説明がなかったため、確定拠出年金を運び忘れ「DC難民」となってしまう事例が多くあります。転職時にも資産をそのまま持ち運びできるのは確定拠出年金の大きな魅力の一つです。それがかえって仇にならないよう、キャリアチェンジの際は「持ち運び」をお忘れなく!